舌下免疫療法
舌下免疫療法
当院では、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を行っております。アレルギー性鼻炎では、アレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)を吸入することによって、鼻の粘膜でアレルギー反応が起こり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状があらわれます。舌下免疫療法とは、長い治療期間を要しますが、原因となるアレルゲンを少しずつ摂取することで、体を徐々にアレルゲンに慣れさせて、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えていくという治療法です。現在対象となっているのは、スギ花粉症とダニアレルギーです。
舌下免疫療法によってアレルギー症状を長期間にわたり改善することのできる可能性のある治療法です。治療効果は約8割の方にあるとされています。そのうち、約2割の方は症状が出なくなり、残りの約6割の方は症状の改善が認められます。しかし、すべての患者さんに効果が期待できるわけではなく、効果を実感されない方が約2割います。体の体質を徐々に改善する治療であるため、長期間(3~5年)毎日薬を飲み続ける必要があります。
アナフィラキシーなどの重大な副作用の発症頻度は少ない比較的安全な治療ですが、その可能性はゼロではありません。また、治療開始の初期には、口の中の腫れ、かゆみ、不快感、のどの刺激感などの副作用が現れる場合がありますが、多くは次第に軽減していきます。
現在対象となっているのは、スギ花粉症とダニアレルギーです。それ以外のアレルギーに対する舌下免疫療法は日本にはありません。
スギ花粉症の方に対する治療は、花粉飛散期には開始できませんので6~12月に開始します。ダニアレルギーの方はいつでも開始することができます。
以下に該当する方は治療することができません、もしくは注意が必要となります。
治療を受けられない方
・スギ花粉症もしくはダニアレルギーではない方
・5歳未満の方
・重い気管支喘息の方
・悪性腫瘍(がん)や免疫系の病気がある方
治療に注意が必要な方
・アレルゲンを使った治療や検査によってアレルギー症状をおこしたことがある方
・気管支喘息の方
・65歳以上の方
・妊婦の方、授乳中の方(妊娠中の治療導入はできませんが、舌下免疫療法中に妊娠した場合では治療を継続することができます。)
・抜歯後や口の中の術後、または口の中に傷や炎症などがある方
・重症の心疾患、肺疾患及び高血圧症がある方
・他に服用中の薬がある方(非選択的β遮断薬、三環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬など)
・全身性ステロイド薬の投与を受けている方
・スギ花粉およびダニ以外のアレルゲンに対しても反応性が高い方
1.アレルギー検査
診察を受けていただき、アレルギー検査を行います。
アレルゲンがスギ花粉かダニであることを確認し、舌下免疫療法の適応を判断します。
他院で実施したアレルギー検査の結果がある方はご持参ください。古いものでしたら再検査をお勧めしています。
↓
2.舌下免疫療法の初回投与
アレルギー検査の結果を確認し舌下免疫療法の適応と判断した場合、当院にて舌下免疫療法の薬の初回投与を行います。アナフィラキシーなど重篤なアレルギー反応が起こらないかどうか慎重に確認するため、医師の監督の下で初回の投与を行います。アナフィラキシーは30分以内に起こることが多いため、約30分はクリニック内で待機していただきます。その後、医師の診察を行い、問題なければ終了となります。初回投与の際は所要時間1時間ほどかかります。そのため、初回投与希望日の受診につきましては、診察時間終了の1時間30分前までにはご来院いただきますようお願いいたします。
また、初回投与から1週間後に薬の増量を行うため、1週間後に受診が必要となります。併せてご確認いただきますようお願いいたします。
2日目以降は、医師の指示に従って、ご自宅にて服用いただきます。初期の処方期間は1週間になります。
↓
3.初回の経過観察
1週間後に再診していただきます。服用の状況や副作用の発現を確認し、問題なければ1か月分処方します。
↓
4.定期的な経過観察、処方
以後、1か月ごとに受診していただき、効果、服用状況、副作用を確認します。
これを3~5年間継続します。
アレルゲンを投与する治療のため、副作用としてアレルギー反応が起こる可能性があります。ごくまれではありますがアナフィラキシーなどの重篤な症状が発現する可能性があります。そのため、初回投与の際は医師の監督のもとクリニックで行い、投与後30分はクリニック内で待機していただき、副作用が起こらないか確認する必要があります。
また2日目以降、ご自宅で服用いただく際も副作用の発現にご注意ください。服用後30分間、服用開始初期(およそ1カ月)、スギ花粉が飛散している時期などは副作用が発現しやすくなります。
主な副作用としては以下のものがあります。多くは次第に軽減していきます。
・口の中の副作用(口内炎、舌の下の腫れ、口の中の腫れ)
・のどのかゆみ、不快感、刺激感
・耳、鼻のかゆみ
・頭痛
など
特に緊急性が高い重大な副作用
下記のような症状が一つでもあらわれた場合、救急車を要請するなど、迅速な対応が必要です。直ちに医療機関を受診してください。
アナフィラキシーの前兆
(1) 皮膚の症状
じんま疹、掻痒感、紅斑、皮膚の発赤などの全身的な皮膚症状
(2) 呼吸器の症状
声がかれる、鼻がつまる、くしゃみ、喉の掻痒感、胸のしめつけ感、咳、呼吸困難、呼吸の音がゼーゼー・ヒューヒューする、チアノーゼなど
(3) 消化器の症状
胃痛、吐き気、嘔吐、下痢など
(4) 循環器の症状
頻脈、不整脈、血圧低下など
(5) 眼の症状
視覚異常、視野の狭窄など
(6) 神経の症状
不安、恐怖感、意識の混濁など